フェアトレードをめぐる世界の潮流 :フェアトレード認証から企業独自の基準への移行が起きている

Copyright © 2012 Fairtrade Label Japan

フェアトレード・インターナショナルが10月12日に発表したレポートによれば、フェアトレード認証製品の2016年の売上は、過去最高の78億ユーロに達しました。

年々順調に売上を伸ばしているフェアトレード製品ですが、近年では大企業がフェアトレード認証から離れ、独自に商品原料の調達基準を設ける事例が相次いでいるようです。

”世界的に見ると、フェアトレードを取り巻く社会的、経済的環境は、フェアトレード市場が急速に拡大した1990年代とは大きく変化してきています。近年、企業の中には、サステナビリティへの取組みとして、独立した客観的な第三者基準・第三者認証の活用から、企業独自の自社基準・自社プログラムをつくる傾向がみられます。”
フェアトレード・ラベル・ジャパンより抜粋

こういった状況の一つの事例として、チョコレート業界の動向がイギリスのガーディアン紙に紹介されていました。

(以下記事要約)

オーガニックチョコレートのメーカーであるGreen & Black社は、フェアトレード認証もオーガニック認証もないチョコレートバーの販売を開始する。この動きは様々なオルタナティブな認証が急増する中で、フェアトレードの土壌を脅かすものとなりうる。

かつてパッケージの全面に出ていたオーガニック認証ロゴは姿を消している。またカカオ豆の原料は[Cocoa Life]と呼ばれる モンデリーズ社による認証に変更されたため、フェアトレードのロゴも消えている。モンデリーズ社によればこの認証は発展途上国で苦しむカカオ農家を手助けする、世界規模のスケールの認証になるという。

またキャドバリーやSainsburyも自社製品からフェアトレード認証を除き始めている。

Green & Black社の創業者はこういった動きは必要な原材料を確保するためとし、またフェアトレードのシステムに悪影響があることを否定している。またフェアトレード認証はかつて[Cocoa Life]のパートナー団体であったことを指摘している。

しかし専門家はフェアトレードから自社の認証に移行することは、消費者の混乱を招くと警告をしている。
Green & Black’s new UK chocolate bar will be neither organic nor Fairtrade

個人的にはフェアトレード認証からの離脱というこの兆候は、消費者にとっても生産者にとってもネガティブな影響が多いのではと感じています。

商品を販売する企業独自の基準は、第三者機関の基準に比べて都合のいいものになる可能性が高く、また監査の透明性にも疑問が残ります。最近では日産やスバルの車両無資格検査が発覚しましたが、利益を追求することを第一とした企業が策定した基準というものが果たしてどれだけの信頼に値するものでしょうか?

Fairtrade Internationalはこういった流れの中で、”これまでの基準・認証制度に加え、サプライチェーン上にある児童労働や人権などの課題解決を促す新しいプログラムの提供を目指しています”と述べています。

企業が策定した基準に対しても、第三者機関の監査や認証を受けれるシステムが整えられれば、企業は今後より柔軟に自社の商品原材料を調達していけるかもしれません。

いずれにせよ、フェアトレードやエシカルを謳った商品を選ぶときは、その具体的な基準や透明性に気を配りたいものです。